札幌で暮らす一週間は、区境を何度も越えます。中央区へ通勤し、白石区で乗り換え、豊平区へ通院し、週末は手稲区の家族を訪ねる。住所の区名は一つでも、実際に使う札幌は一つの区に収まりません。
札幌市で住所を比べるとき、「何区か」は大切です。区役所、学校、行政窓口の確認単位になるからです。ただし、中央・北・東・白石・厚別・豊平・清田・南・西・手稲の10区をそのまま10通りの生活圏と考えると、毎日の乗換えを見誤ります。
南北線は麻生から真駒内へ、東西線は宮の沢から新さっぽろへ、東豊線は栄町から福住へ走ります。地下鉄だけで47駅。さらに函館本線、千歳線、学園都市線、市電、バスが別の方向を補います。同じ北区でも南北線沿線と学園都市線沿線は駅へ向かう方角が違い、同じ南区でも真駒内駅周辺と定山渓方面を同じ条件にはできません。
地形も一枚ではありません。北部の低地、豊平川がつくった扇状地、南東部の丘陵・台地、南西部の山地が一つの市域に入ります。札幌の候補地は、10区のあとに「使う交通軸」と「立っている地形」を重ねて初めて輪郭が出ます。
10区より先に、三つの地下鉄軸とJRの横線を描く
行政区名を入口にしつつ、家族が実際に乗る路線と乗換駅から生活圏を描き直します。
地下鉄3線は大通で交わり、南北線と東豊線はさっぽろでも広域交通へ接続します。それでも、47駅を「地下鉄駅に近い」という一語でまとめられません。南北線は北区と豊平区・南区、東西線は西区と白石区・厚別区、東豊線は東区と豊平区を、それぞれ違う角度で都心へ結びます。
JRは地下鉄と別の横線を描きます。函館本線は手稲・琴似・桑園から札幌を経て苗穂・白石・厚別へ、千歳線は平和・新札幌・上野幌へ、学園都市線は八軒、新川、新琴似、篠路、あいの里方面へ向かいます。地下鉄の駅名だけを追うと、手稲やあいの里の日常が見えません。
市電は24停留場で中央区南部を環状に結びます。札幌全体を覆う路線ではなく、山鼻、西線、すすきの周辺で短い移動をつなぐ交通です。地下鉄、JR、市電は本数の多寡ではなく、どの生活用事を受け持つかで分けます。
候補住所から勤務先と通学先へ線を引き、次に病院、区役所、食品の買い物へ線を引きます。全部が札幌駅へ集まらないなら、都心所要時間だけで比べる理由もありません。
札幌駅だけでなく、地域交流拠点を毎週の目的地にする
都心へ出ない日をつくり、区役所、病院、学校、買い物が集まる第二の中心を確かめます。
札幌市の都市計画は、都心のほかに「地域交流拠点」を置いています。主要な地下鉄・JR駅の周辺や、区役所を中心に生活利便機能が集まる地域です。新さっぽろ、琴似、白石、真駒内などは、札幌駅へ向かう途中駅である前に、周辺の日常を受け止める拠点として読みます。駅を核にした拠点と、区役所・地域施設を核にした拠点では、乗換えのしやすさと用事のまとまり方が違います。
ここで比較したいのは施設数ではありません。候補住所から、平日の受診、休日の買い物、月に一度の行政手続きが同じ方向にあるかです。地下鉄で都心へ20分でも、保育・学校・通院の三方向へ家族が分かれるなら、毎週の移動は一本になりません。
清田区のように地下鉄駅がない区も、「鉄道がない」で止めず、福住・大谷地・南郷18丁目など、どの駅へバスがつながるかを確認します。同じ清田区でも国道36号側と大谷地側では接続駅の向きが変わります。南区も真駒内駅周辺、石山・藤野、定山渓方面を分け、地下鉄を降りた後にどれだけバス区間が残るかを比べます。
都心を第一の中心と決める前に、週に何度も使う地域交流拠点を第二の中心として地図へ置きます。 その位置が家族の生活時間を短くすることがあります。
北の低地、中央の扇状地、南東の台地、南西の山地を重ねる
同じ市内で大きく変わる地形を、坂、河川、冬道、候補住所の避難経路へ置き換えます。
札幌の市街地は豊平川扇状地を中心に広がりましたが、市域全体はそれだけではありません。北部には石狩川下流域の低地があり、南東部には月寒台地を含む丘陵・台地、南西部には手稲山系や定山渓方面の山地があります。市の資料では最高地点と最低地点の差も大きく、一つの平坦な都市として扱えません。
北区・東区の低地では河川と内水、南・西区の山麓では坂と土砂、豊平・清田区の丘陵ではバス停までの高低差を見ます。行政区の境は直線でも、地形の境は町丁目の途中を通ることがあります。
冬はこの差が歩行に表れます。夏に駅まで12分だった経路が冬も同じとは限りません。除雪される幹線、横断歩道、坂、吹きさらしになる区間、屋根のある待合場所を、実際の帰宅時刻に歩きます。
駅までの近さを測る物差しは、直線距離ではなく「冬に同じ道を戻れるか」です。
地下鉄終点から先は、冬のバスと帰宅便で測る
夏の日中に一度走るだけでは見えない、積雪期と夜の乗継を先に試します。
地下鉄の終点は生活圏の終点ではありません。真駒内、福住、宮の沢、新さっぽろなどから先へバスが伸び、住宅地や山間部を結びます。反対に、最寄りの地下鉄駅が同じでも、乗るバスの系統と本数、停留所までの坂で条件が変わります。
確認は朝の往路より夜の復路から始めます。第一に、終バス一本前の地下鉄到着と接続時間を調べる。第二に、降車停留所から家まで、除雪される幹線と生活道路のどちらを通るか歩く。第三に、遅延時に別系統や徒歩へ切り替えられる地点を決めます。家族の一人が車を使う日、残る人が受診や買い物から戻れるかも同じ手順で試します。地下鉄と一部のバスには乗継制度がありますが、すべての路線を同じ条件と考えず、運賃と適用条件を公式検索で確かめます。
郊外を「車が必要」と断定するだけでは判断材料になりません。車を使う通常日、故障や免許返納で使えない日、大雪で予定を変える日の三つを作り、代替手段と必要な外出を分けます。