真岡鐵道の列車は茂木駅で折り返します。終着駅という言葉には、町の中心が線路の先端へ集まる印象があります。しかし茂木町は南北27km、東西12kmに延び、町域のおよそ64%を山地が占めます。中川、逆川、須藤の各地区は、駅から別の谷へ広がります。
1954年、茂木町・中川村・逆川村・須藤村が合併して現在の町になりました。四地区の名は昔の行政史に残るだけではなく、2026年公表の農業地域計画でも使われています。
茂木駅は町の入口ですが、町全体を一つの駅勢圏に変える終点ではありません。 線路の先を、川と谷と帰り道から読みます。
茂木駅で線路は終わるが、町の生活圏は終わらない
終着駅を全町の中心と決めず、その先に続く中川・逆川・須藤の広がりから始めます。
茂木町のほぼ全域、約17,269haは区域区分を定めない都市計画区域です。その中で用途地域は、駅、役場、公共施設、商店が集まる茂木市街の約179haに限られます。山地の多い町で、まとまった市街地が盆地状の低地へ集まることには地形上の理由があります。
ただし、全町がこの市街地を同じ向きから使うわけではありません。中川は那珂川側、逆川は町南部、須藤は北西部に広がり、谷筋ごとに町中心や隣接自治体への道が変わります。
終着駅からの直線距離より、自宅の谷がどの国道・県道へ開き、橋を何本渡るかが日常を決めます。 「茂木駅まで何分」だけでは四地区の違いを測れません。
天矢場の峠を越える鉄道と、市貝町にある笹原田駅
路線図の並びと行政区域を分け、町内駅を所在地から確かめます。
真岡鐵道の駅順は、市塙、笹原田、天矢場、茂木です。この並びだけを見ると、三駅とも茂木町にあるように感じます。実際には笹原田駅の住所は市貝町笹原田。茂木町内の駅は天矢場駅と茂木駅の二つです。
天矢場駅は市貝町との峠の頂上付近、北高岡にあります。真岡鐵道は茂木―天矢場間を路線最大の勾配区間と説明します。鉄道が平坦な谷底を一直線に入るのではなく、峠を越えて茂木盆地へ下りることが分かります。
路線図で隣り合うことと、同じ自治体にあることは別です。 駅名から所在地を推測せず、町境、駅住所、実際に使う道路を一緒に確認します。
逆川は南から北へ、四地区の谷をほどいて流れる
川名、流向、谷底平野、市街地の位置をつなぎ、道路の形を地形から読みます。
逆川は町南部の小貫、奈良駄峠付近に源を発し、小山、木幡などの谷底農地を通って茂木市街へ入り、飯野で那珂川に合流します。周囲の川と逆向きの北へ流れることが名の由来と県計画は説明します。
流域は標高200〜400mほどの小起伏山地が中心で、谷底平野と山間峡谷が連続します。国道123号・294号、真岡鐵道も、自由な直線ではなく限られた谷や峠を選んで通ります。
逆川は町を分断する川であると同時に、農地、市街地、道路を一つの細長い平地へ並べた軸です。 江戸期の用水堰や大正期の水力発電の履歴も、川が暮らしを支えた側面を伝えます。
中川・須藤へは「駅から何km」より谷筋の復路を測る
道路と公共交通を、行きの到達だけでなく夕方・休日の帰路まで組み立てます。
中川地区は那珂川と逆川の合流側、須藤地区は町北西部の谷へ広がります。茂木駅へ着いても、そこから自宅・病院・買い物先まで別の交通が必要です。道路が通じていても、夜間や休日に同じ手段で戻れるとは限りません。
町の地域公共交通計画で現行路線・予約交通を確認し、利用日には登録、運行区域、最終便を再確認します。車を使う場合も、一本道の迂回、橋の通行止め、冬季の路面を別に見ます。
山間部の公共交通は「行けるか」だけでなく、用事が終わった時刻に同じ谷へ帰れるかで評価します。 町外の医療・商業へ向かう日は、茂木中心を経由しない方が自然な地区もあります。
洪水と土砂を一枚の危険度にまとめない
那珂川・逆川沿いと樹枝状の谷斜面で、別の避難判断が必要な理由を整理します。
町のハザードマップは洪水と土砂災害を分けて示します。那珂川・逆川沿いでは浸水と橋の通行、谷の斜面では崩壊・土石流と道路閉塞が主な確認点になります。同じ住所でも川側と山側で避難方向が違う場合があります。
逆川は市街地を流れ、過去に氾濫記録があります。一方、町全域には樹枝状の谷が入り、斜面から道路へ出る土砂も想定されます。川から離れれば一律に安全、山の上なら洪水だけ見なくてよい、とは言えません。