函館市と聞いて、市電が走る坂の街を思い浮かべる人は多いでしょう。その姿は間違いではありません。ただ、現在の市域を市電の路線図だけで読むと、東へ長く続く海岸集落が丸ごと抜けます。
市内のJR駅は函館、五稜郭、桔梗の3駅です。北海道新幹線の新函館北斗駅は函館市ではなく北斗市にあります。五稜郭駅では、木古内方面へ道南いさりび鉄道が接続します。市電は湯の川から五稜郭公園前、函館駅前、十字街を経て、函館どつく前と谷地頭へ分かれます。便利な線ですが、戸井、恵山、椴法華、南茅部へは届きません。
この東部4地域は2004年、戸井町・恵山町・椴法華村・南茅部町が編入されて函館市になりました。今も各地域に支所があり、道路、公園、河川などの連絡先も支所管内で分かれます。函館には、市電を待つ時間と、海岸道路をたどる時間が同じ市名の中に並んでいます。
市電の線路が届く函館と、届かない函館を分ける
市電を街の象徴ではなく、湯の川から西部を結ぶ限定された生活線として読みます。
市電は湯の川から旧市街をつなぐ、分かりやすい生活線です。湯の川温泉、五稜郭公園前、松風町、函館駅前、十字街などの停留場をたどれば、沿線の通院、買い物、行政、学校の位置を組みやすくなります。十字街から先は函館どつく前と谷地頭へ分かれるため、西部地区でも帰宅する停留場の系統を確認します。
ただし「五稜郭」と呼ばれる二つの交通地点は離れています。JR五稜郭駅と市電の五稜郭公園前停留場は同じ乗換地点ではありません。名前だけで地図を閉じると、徒歩やバスの区間を見落とします。
JR桔梗駅周辺や美原方面も、市電の線路外です。北側へ広がった住宅・商業地は、JR、路線バス、産業道路や外環状道路を使います。東部へ進めば、同じ「市電がない地域」でも距離と代替交通はさらに変わります。
市電が届かない地域を一つの郊外にせず、JR北側市街と東部海岸を最初から分けます。
外環状線の南側に集める都市と、北側へ伸びた住宅地を重ねる
立地適正化の方針から、旧市街・五稜郭・美原・桔梗を同じ中心へ押し込めません。
函館市の立地適正化計画は、人口減少のなかでも生活機能を維持するため、外環状線(産業道路)沿道から南側へ居住・都市機能を集約する考え方を示します。函館駅周辺だけを残す計画でも、線の北側を切り捨てる計画でもありません。五稜郭、湯川など既存の機能が集まる市街地を公共交通でつなぎ、長期的に生活サービスへ届きやすい構造を保つ方針です。
一方、外環状線の北側にも美原、昭和、桔梗などの住宅・商業地があります。候補住所が誘導区域の内外どちらかを確認することは、将来性を占うためではありません。行政がどこへ生活サービスを維持・誘導しようとしているかを知り、自分の用事がその方向と合うかを見るためです。
函館駅へ近くても、毎日の通勤先が北側なら市中心を経由しない生活になります。反対に桔梗に住んでも、学校・受診・行政の用事が南側へ集まれば往復が増えます。
中心まで何分かより、外環状線を一週間に何度またぐかを数えます。
2004年編入の東部4地域は、支所と海岸道路で暮らす
戸井・恵山・椴法華・南茅部を「市の東側」と一括せず、旧町村ごとの日常を追います。
戸井・恵山・椴法華・南茅部は、合併前にそれぞれ自治体でした。現在も町名一覧、公共施設、道路・河川管理、学校や地域行事の情報は支所管内を単位に整理されます。旧町村名は懐かしい呼び方ではなく、現在の行政と生活を探す索引です。
交通は函館バスなどの一般路線に加え、通学バスや外出支援サービスがあります。ただし、通学・福祉目的の交通を誰でも乗れる一般路線と数えてはいけません。運行対象、予約、曜日、復路を一つずつ確認します。
東部を一括することもできません。戸井は旧市街側から東へ入る最初の支所地域、恵山は火山防災を日常地図へ重ねる地域、椴法華は恵山岬側の小さな旧村単位、南茅部は太平洋側へ回り込む別の学校・地域中心を持ちます。海岸道路が続いても、支所、学校、地域内で済む買い物・受診、市中心へ出る頻度は同じではありません。
4支所が残ることは、合併から20年以上たっても四つの地域単位が実務に生きている証拠です。
函館駅ではなく、一週間の受診・通学・買い物を起点にする
鉄道中心、北部商業、湯川・空港、東部支所の用事を家族の予定表へ置きます。