静岡市は葵区、駿河区、清水区の三区です。ただし三区だけで住所を比べると、葵区の静岡駅前と井川、清水区の港町と由比・蒲原が同じ色になってしまいます。行政区より先に、静岡と清水という二つの都心を置く必要があります。
市は拠点を茶葉、公共交通軸を葉脈に見立てた「お茶っ葉型」の都市構造を掲げています。この比喩を計画用語で終わらせず、自宅からどの葉脈で用事へ向かうかという地図として使います。
葉脈の駅や停留所が近くても、玄関までの最後の区間が坂、橋、細い道なら日常の負担は残ります。徒歩、自転車、地域交通のどれで葉脈へ接続するかまでを一続きにします。
三行政区より先に二つの都心を置く
広い三区を、静岡中心と清水中心から日常の向きへ分けます。
2003年に旧静岡市と旧清水市が合併し、2005年に三区が設置されました。その後、蒲原と由比も加わりました。市役所周辺・静岡駅・新静岡駅に集まる静岡都心と、清水駅・新清水駅・港を核にする清水中心は、成り立ちも日常の向きも異なります。
葵区・駿河区の境をまたいで静岡駅を使う住所、清水区内で清水駅より草薙や興津へ近い住所があります。区役所への距離ではなく、通勤、通学、買い物、診療の四つをどちらの中心へ向けるかを地図へ置きます。
静岡と清水の間には東静岡・草薙の連続した市街地があります。二都心の中間だから均等に便利と決めず、使う駅と道路、帰宅列車の方向を確認します。
三区は住所の管理単位、二つの都心は日常の方向を読む単位です。
JRと静鉄の二本の葉脈を乗り比べる
並行する鉄道を、駅間・乗換・帰宅時刻から使い分けます。
JR東海道本線は用宗、安倍川、静岡、東静岡、草薙、清水、興津、由比、蒲原、新蒲原と東西へ続きます。静岡鉄道静岡清水線は新静岡から新清水まで、市街地の内側を細かな駅間で結びます。
二路線は並行しても、同じ場所を走りません。静岡駅と新静岡駅、清水駅と新清水駅には徒歩の乗換区間があります。候補住所から各駅へ歩き、乗車時間だけでなく、乗換の横断歩道、雨天の待合、最終区間を比べます。
毎回二路線を乗り継ぐ必要もありません。草薙や沿線駅の周囲で通院・買い物を済ませられるなら、静岡・清水の中心まで行かない日の方が短くなります。駅周辺で完結する用事も一週間へ置きます。
東海道新幹線を使う日は静岡駅へ向かいますが、毎日の買い物や通学では静鉄の近い駅が役立つ住所もあります。速い列車と細かい駅を足し算せず、一週間の用事ごとに入口を選びます。
JRと静鉄は代替関係ではなく、異なる駅勢圏を結ぶ二本の葉脈です。
由比・蒲原から用宗まで海岸平野を分ける
東西に長い沿岸部を、最寄り都心と災害条件で区切ります。
市の東端には旧由比町・蒲原町、西側には用宗・安倍川周辺があります。いずれも東海道線の駅を持つ沿岸部ですが、清水中心、静岡都心、富士方面のどこへ日常を向けるかが違います。
由比・蒲原では海と山が近い狭い区間、興津・清水では巴川や港湾部、用宗では安倍川河口と海岸を重ねます。駅に近いことだけでなく、津波時に線路や国道を越えてどこへ上がるかを歩きます。
蒲原・新蒲原は富士市側への近さ、由比は海と山が迫る旧町のまとまり、興津は清水中心へつながる東の入口として分けます。三地域を「清水区東部」と一括りにせず、普段使う列車の方向を確認します。
旧町の行政・公共施設で済む用事と、清水中心や静岡都心へ出る用事を分けます。東海道線が止まった日には、東西どちらへ道路で出るか、地域内で待つかも決めます。
葵区の山間地を別の交通圏として組む
井川までを一つの区名で括らず、自主運行交通の一日を作ります。
葵区は静岡駅北側の都心から南アルプスまで続きます。井川、大河内、梅ヶ島、玉川、清沢、大川など旧村地域を、同じ区内の郊外として扱うことはできません。
民間路線が成立しにくい地域では、市が自主運行バスなどを運行しています。井川地区では横沢と白樺荘を結ぶ便があり、少人数車両では住民利用が優先されます。運行日、乗継、定員を最新案内で確かめます。
来訪者は満員時に次の手段を持ち、住民も通院など外せない予定では代替日や送迎を用意します。市街地の大型路線バスと同じ感覚で、時刻直前に乗れると決めません。
山間地から静岡都心へ出る日は、最初の地域交通、幹線バスまたは鉄道、その先の徒歩を一つの行程にします。往路だけ成立しても、診療や行政の用事が延びた後に戻れなければ日常交通にはなりません。
葵区北部は静岡駅の郊外ではなく、地域交通から始まる別の一日を持ちます。
安倍川・巴川・海・斜面で避難を変える
住所によって違う水と地形を、通勤・通学路へ重ねます。
静岡市の水と地形は一種類ではありません。安倍川沿い、巴川流域、清水・由比・蒲原・用宗の沿岸、葵区北部の谷と斜面では、見るハザード図が変わります。
巴川周辺では河川洪水と内水、沿岸では津波、山地では土砂災害を確認します。「清水区だから津波」「葵区だから山」と区名だけで決めず、候補住所と通勤路の標高・水系を照合します。
自宅、駅、橋、学校、職場、避難先を同じ地図へ置きます。家族が静岡と清水に分かれている昼間は、二都心の間を移動して合流する前提を外し、それぞれの水系で待機先を持ちます。
安倍川側の家族、巴川側の家族、沿岸にいる家族は同じ避難先へ向かわず、各自の安全確保後に連絡します。集合時刻ではなく、連絡が取れない時の待機時間と次の連絡方法を先に決めます。
市全体の一枚図ではなく、住所に合う川・海・斜面の図を選びます。