珠洲市には、駅前から同心円を描く住所選びが当てはまりません。市内の鉄道は2005年に廃止され、現在は道路とバスが十地区を結びます。しかも、内浦側に続く市街地だけを見ても、大谷や日置の外浦、若山の谷筋で暮らす一日はつかめません。
市の都市計画は、宝立、飯田、正院・蛸島を三つの「まちなか拠点」としています。1954年に三町六村が合併した後も、宝立、上戸、飯田、若山、直、正院、蛸島、三崎、日置、大谷という十地区は、交通、公共施設、復興を探す現在の索引です。
飯田一極ではなく三つのまちなかを置く
飯田、宝立、正院・蛸島を用事の受け皿にし、十地区が毎回同じ中心へ向かう前提を外します。
飯田には市役所や医療・買い物の機能が集まります。ただし、宝立からは能登町・穴水方向、正院・蛸島からは東側海岸、三崎・日置からは半島先端へ生活線が伸びます。どの用事も飯田へ往復する計画では、地域内で済む用事まで長距離になります。
候補住所ごとに、食料、薬、行政手続き、通学を三拠点へ割り当てます。飯田でなければ済まない用事と、宝立または正院・蛸島で閉じられる用事を分け、家族送迎が同じ時間に重なる日を確認します。
確認票は十地区を縦軸にし、平日午前、平日夕方、休日の三列を作ります。買い物先の名前ではなく「薬を受け取れる」「現金を引き出せる」「一時間待てる」のように目的を書けば、施設が休止・移転した時にも別の拠点へ組み替えられます。復興の途中では、場所の固定より用事の代替可能性が大切です。
珠洲の中心は一つの大きな核ではなく、三つのまちなかと十地区が役割を分ける構造です。
鉄道の代わりに穴水から先をつなぐ
駅がないという一語で終えず、鉄道を降りてから地区へ戻るバスと道路を一続きにします。
金沢方面などから鉄道を使う場合、のと鉄道の穴水駅が乗換えの入口になります。重要なのは穴水までの到着時刻ではなく、その先の転換バスに間に合い、さらに珠洲市内の地区まで戻れることです。一本の遅れが最後の区間へどう影響するかを見ます。
市内交通には北鉄能登バスの特急・転換バスと、すずバスがあります。転換バスの市内区間には市独自の無料乗車券がありますが、利用条件と対象区間は現行案内で確認します。運賃制度と帰便の有無は別の話です。
交通情報には、路線名、運行日、最終確認日、道路規制時の問い合わせ先を一緒に残します。震災後の臨時便は生活を支える現役の手段ですが、恒久的に同じダイヤが続くとは限りません。スマートフォンの保存画面だけでなく、出発日に市の更新欄を開き直します。
「駅がない」より先へ進み、穴水で降りてから玄関へ帰るまでを一つの経路として数えます。
海回り・山回りを天候で使い分ける
同じ狼煙―飯田でも経由地の異なる二路線を、普段と規制時の帰路として確かめます。
すずバスには狼煙と飯田を結ぶ海回り、山回りの二つがあります。同じ起終点でも、通る集落、立ち寄れる用事、風浪や道路規制の影響が違います。最短時間だけで一方を通常路、他方を予備路と決めるのではなく、候補地区を実際に通るかを確かめます。
若山飯田、大谷飯田、三崎飯田、まちなかの各ルートも担当範囲が違います。宝立・上戸ではデマンドタクシー、曜日限定の臨時便も案内されています。恒常路線、予約交通、震災後の補完便を混ぜず、利用日、予約、乗降場所を一列に並べます。
海回りと山回りは便数の足し算ではなく、天候と道路に応じて十地区へ残す二種類の帰路です。
序列ではなく特性の整理 | 項目 | 日常の組み方 | 現地で確かめること |
| 飯田・上戸・直 | 行政、医療、買い物と中心市街地 | まちなか交通、河川、復旧工事、徒歩 |
| 宝立 | 南西側の拠点、能登町・穴水方向 | デマンド交通、転換バス、海岸、道路規制 |
| 正院・蛸島 | 東側の拠点、港・住宅・公共施設 | 飯田への帰便、津波、高台への経路 |
| 三崎・日置 | 半島先端の沿岸集落 | 海回りと山回り、風浪、停留所までの道 |
| 若山・大谷 | 谷筋と外浦側の集落 | 帰宅時刻、土砂、国道249号、地域内待機 |
十地区の復興を同じ速度で読まない
住宅、道路、公共施設の現況を地区別資料と確認日で更新し、計画と利用可能な状態を分けます。
2024年の能登半島地震と豪雨は、住宅、道路、公共施設に地区ごとの影響を残しました。市は十地区で復興プランを整理しています。市全体の事業名だけを見ず、候補地区で現在利用できるもの、工事中のもの、計画段階のものを分けます。
国道249号の仁江―真浦などは波浪により通行止めとなる場合があり、すずバスも区間運休する可能性があります。「復旧済み」という一度の確認を固定せず、通勤・通院経路には確認日と問い合わせ先を添えます。
復興の現在地は十地区で違うため、住所の所要時間も確認日、経路、天候と一緒に記録します。
津波・豪雨・斜面に地区内の待機先を持つ
指定避難所までの一本道が使えない場面も考え、現在地から移れる安全な場所を複数用意します。
内浦・外浦の沿岸では津波、河川沿いでは洪水、若山・大谷などの谷筋では土砂を重ねます。地震の後に豪雨が続いた経験を踏まえ、一種類のハザード図だけで帰路を決めません。海から高所へ向かう道と、斜面から離れる道は同じ方向とは限りません。
家族が飯田、穴水方向、地区内に分かれている時、全員が自宅へ集合する計画は避けます。停留所から避難先へ歩けるか、道路が一本使えない時に地区内で待てる場所があるかを確認します。
家族間では「連絡が取れなければ飯田へ向かう」とだけ決めず、三崎は地区内、宝立は内陸側、穴水から戻る人は移動を止める、というように現在地別の行動を書きます。地震後の降雨で避難対象が変わる場合は、最初の集合先からさらに動く条件も決めておきます。
指定避難所への一本道だけでなく、十地区の内側に安全を確かめた待機先を持つことが帰宅計画になります。
Q. 珠洲市の中心は飯田だけですか?
飯田は行政・医療等の中心ですが、都市計画は宝立、飯田、正院・蛸島を三拠点として扱います。候補地区の用事で分けます。
Q. 珠洲市内に現役の鉄道駅はありますか?
ありません。穴水駅から先の転換バスと、市内交通を乗り継いで帰路を組みます。
Q. 狼煙飯田の海回りと山回りは同じですか?
起終点は共通でも経由地が異なります。候補住所、天候、道路規制に応じて確認します。
Q. 震災前の所要時間を参考にできますか?
固定値にはできません。最新の道路・交通情報を確認し、確認日と経路を一緒に残します。
Q. 沿岸では津波だけ見ればよいですか?
河川洪水、豪雨、斜面、避難路の寸断も重ねます。現在地ごとに避難対象を切り替えます。
珠洲市では、飯田までの距離だけで住所を測りません。三つのまちなかから十地区へ帰れる交通をつなぎ、海回りと山回りを使い分け、復興中の道路を確認日付きで更新する。複数の災害に対する地区内の待機先まで置けば、変化の途中にある街を過去の地図ではなく、今日の暮らしとして読めます。
この記事のキーワード
#珠洲市
#飯田
#すずバス
#国道249号
#能登半島地震